5月第4週(2) 成田用水の川沿い作品展 


4月から勤務している埼玉県立熊谷図書館の近くに成田用水がある。住宅街を流れる細い用水で、その近くに住む人たちが、思い思いの作品を展示するささやかな野外展を年に一度開いている。
今年は第9回。
僕は2000年の第1回から見にきた。その後、欠かさずではないが、たぶん半分以上は見ている。
核になるような観光拠点とか美術館とかがあるわけではない。なにかの組織が音頭をとったのでもなく、大スポンサーもなく、いわば自然発生的で、とくにまちおこしとかいうつもりもないだろう。そんな、自分たちの楽しみのために始めた集まりがよく続いている。
本来、地域のお祭りというのはそんなふうに始まったのだろうか。
へんに力がこもっていない、自然な感じが漂っていて、すっと気持ちがとけこんでいく。
僕は最先端好みでもあるので、とがった、クールな現代美術もあるといいなと思わないでもない。でも、5月の晴れた日に花で飾られた道をのんびり歩いていると、このゆるさがいいとひたってしまう。

野口信夫さんは自宅の庭に彫刻を展示されている。
幾度か寄るたびにお茶をいただいていて、今年もだった。初めてのときお茶をいれてくれた小学生は、今日は不在だったが、もう大きくなったらしい。
近所を散歩して、知り合いの家をふらっと訪ねる−ような親しみのある風情がいい。
熊谷に住む人の、人なつこい開放的な性格が、この作品展を支えてもいる。

成田用水は江戸時代、慶長年間に荒川からひいた農業用水。
1939年には荒川から6方向へ向けた取水堰を1カ所にまとめて六堰頭首工(ろくせきとうしゅこう)が作られた。2006年にコンピュータ制御の新しい施設ができ、前に見に行ったことがある。(→[10月第5週 6つの堰をまとめて1つにする])

作品展を見る途中で、ここにあった熊谷次郎直実ゆかりの熊野堂(くまんどう)の説明を読む人たち。 くまんどうの説明を見る人たち

この作品展がこのあたりの人たちの景観への関心を高めてもいて、最近の改修工事でも市にはたらきかけて、両岸の石垣を残し、底に生き物がすめるような窪みを作ることを実現している。 
水の流れを意識することで、街と人がつながり、生き生きしてくる。

● アイナ (旧・た吾作)
国道17号「おこのぎ」と、北大通り「裁判所」を結ぶ道。千形(ちかた)神社の斜め前。
tel.048-525-3650


北大通りを渡って「た吾作」で昼を食べようと歩いていて、行きすぎてしまうところだった。
黒い和風リノベーションから、白い洋風リノベーションにかわっていた。
店の名前もカタカナに。

た吾作 改修後の黒いアイナ
た吾作=改修前 アイナ=改修後

内部も梁や素な板材に白ペンキを塗ってある。素な感じは共通で、木目のふりをした合成樹脂とか、燃えると黒煙をモクモクとだしそうな壁紙なんか使っていない。

ランチは750円。日替わりで4種ほどあるなかから選ぶのだが、今日はぶりのしょうが焼きにした。あとご飯とうどんとお新香とサラダと小鉢がつく。
それが大きな板の膳にひとまとめにのせられてくるのだが、前は黒っぽかったのが、膳も白っぽくなった。
コシのあるうどんとおいしいおかずは相変わらず。
この数日後に行ったときは、まぐろしそ巻天ぷらにした。まぐろをしそで巻いて天ぷらに揚げてある。楽しみでながらメニューを考えているような心づくしがうれしい。
こういう感じの店が成田用水に沿ってもできたらますます楽しいと思う。

参考:

  • 『熊谷の魅力的な川沿いを歩く』 鈴木喜一・文 石井瑞穂・文とスケッチ 畑亮・写真 「住宅建築」建築資料研究社 2008.2月